なぜ読書をするのか?ノルウェイの森・村上春樹
2002年のヒグラシの鳴くころ、僕は23回目の夏を迎えていた。その日の午後は、とても暑く夕暮れを待ち遠しく思っていた。
お昼のニュースでは、就職氷河期の学生たちを映し出していた。僕は、昨晩の残りのカレーを食べ終え退屈な午後を最近買った村上春樹の作品を読むことにしていた。この作品は高校時代友人に薦められたもので、機会があれば読んでみようと思っていた。
なぜ高校時代に薦められた作品を大学を卒業後1年たった頃に、読むのか?
それは簡単に言うと機会ができたからだ。それまで過去に何度か読書を薦められた事はあった。正確には2回だけだ。
しかし受動的に物事を進めるのが嫌いな僕は、それまで読んで来なかった。
この作品は、僕小説に対する堅苦しい、ワンパターン化した起承転結、古臭い、といったイメージを違うものに作り替えた。
彼のパターンは、最後まで推測できない。一発逆転満塁ホームランが有り得る。だからといって、いつも逆転できるわけではない。そこが彼の作品の魅力だ。
彼は昔から有名な作家だったのだろうけど、僕の耳に届いたのは1997年の高校卒業まじかの2月だった。受験を終え落ち着いた寒い教室で、その言葉は過渡期の僕の心に響いた。
僕の放った言葉は、彼を反応させた。
「あ〜〜村上春樹やっ。」
憧れの大学生活は、想像していたよりも実はもっと軽く過ぎていった。
そしてやっと機会が来たのだ。
その作品を読み薦めるにしたがって僕の小説に対するイメージはガラガラと音をたてて崩れていった。
堅苦しい、古臭い、ワンパターン・・・。
僕は読書を始めた。
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